押して駄目なら引いてみろ
目が合ったかと思えば、開口一番兵助がそう言い放った。
おい、なんの話だ? 意味が分からんぞ。
「さんとのことだよ」
さすが雷蔵、私の心中を察するとはさすがだ。しかし…、
「いきなりどうしたんだ?」
部屋に戻ってみれば、いつもの4人が輪になって座り込んでいたんだぞ。何事だって話だ。
「今みんなで話してたんだけどね、三郎のさんに対する空回りをどうにかできないかと思ったんだ」
「し、辛辣だな、雷蔵…」
今のはかなり聞いたぞ。空回り…そうか、空回り、か…。
「…それで、押して駄目なら引いてみろって?」
「さすが三郎、そのとおり!」
おい、勘右衛門。お前明らかに面白がっているだろう!?
「まあ、いい加減見ていてまどろっこしいしね」
「雷蔵はぶっちゃけすぎだ!」
まったくだ。八、お前はいい奴だよ。本人には絶対言ってやらないけどな。
「まあ、の心次第だけどな」
ある意味雷蔵より容赦ないな、兵助。
だが、兵助の言うことも一理ある。引いてみる、か。
確かに恋は駆け引きだというしな。…よし! そうと決まれば早速実行だ!
ってお前ら、その生暖かい目をどうにかしろ!
とりあえずくのたま長屋へ行くことをやめ、会う回数を減らした。
話しかけられても何かと理由をつけて、話を打ち切った。
頑張った、頑張った、私…っ!
でももう限界だ!
に会えない話せない触れられないなんて、私が耐えられない!!
なんの苦行だ、これは!?
無理無理無理無理、寂しさで死んでしまう!
そう叫んだら、「3日か…思ったよりは耐えた方じゃない?」と雷蔵からお言葉をいただいた。
笑顔でそういうことを言わないでほしい。
3日ぶりに会いに行くと、いつもの小言付きで出迎えられた。
うん、やはりこうでなくてはな。
…心なしか、いつもより優しかった気がする。
それなりに効果があったということにしておこう。
'11.8.26〜'11.9.15 拍手公開。