「せっかく忍術学園に行くんだ、変装の腕も磨いてこい。
 素顔見られたらとの許嫁の件はなしだからな」

 入学前日にとんでもないこと言いやがった、 こ の 親 父 … っ !

「…三郎、何故狐の面なんかつけてるんですか?」

 ほらみろ、案の定に「なにやってんだ、こいつ」って見られたじゃねえか、ちくしょう!
 説明したら納得してくれたけどな。
 とにかく、私達は忍術学園に入学した。
 正直言って、忍術学園にあまり期待はしてなかった。
 物心ついた時から忍術を叩き込まれてきた私が、今更学ぶことなどあるのか?
 そんなことを考えていたが、それはいい意味で裏切られた。
 確かに学ぶことは基礎からで退屈だが、褒められることはあっても大袈裟に持ち上げられることはない。
 私にはないものを持っている友人もできた。
 い組の久々知兵助と尾浜勘右衛門、同じろ組の竹谷八左ヱ門、そして不破雷蔵。
 雷蔵とは同室ということもあり、一番最初にできた友人だ。
 私が顔を隠していても気を悪くすることなく、普通に接してくれる優しい友。
 …単に大雑把なだけかもしれないけどな。顔を借りても「わー、すごいね!」ですましたし、大物だ。
 しばらく学園生活を満喫していたが、雷蔵の顔を借りるようになってからに会ってないことに気づいた。
 まあ、まだ3日しか経ってないしな。
 せっかくだ、この顔をあいつに見せに行こう。
 あいつの行動範囲は狭いから、探すのは楽だ。図書室、食堂、鍛錬場、もしくはくのたま長屋の自室。

、いるか?」

 返事を待たずに開けると、予想通りがいた。一人部屋というのは都合がいい。

「三郎、何度も言うようですけどくのたま長屋、は…」
「立ち入り禁止、だろ。分かってるさ」

 途切れた言葉の続きを代弁してやる。何度も聞いたぞ、それ。守るかどうかは別だけどな。
 それにしても驚いてるな、私の変装の腕は知ってるはずなのに珍しいこともあるものだ。

「さ、三郎、ちょ、ちょっとここに来てください」

 床をぺしぺしと叩きながら呼ぶ姿も可愛い…が、本当に挙動不審だ。どうした?
 大人しくの前に座ると、グイッと顔が近づいてきた。
 って、近い近い! なんだ、どうした!? って、なに両手で私の顔を固定してるんだ!?
 口吸いするような体勢なのだが、…に限ってそれはないだろうな。
 しかし一体何がしたいんだ、こいつは。
 頬を赤らめて食い入るように私の顔を見て…って、ちょっと待て、今私の顔は雷蔵の顔だ。
 ま、まさかな…。

「かっこいい…」
「!?」

 ちょ、なんだその緩んだ顔は!
 私の素顔を見ても「かっこいい」とか言ったことも、そんな表情したこともないだろう!?

「…そんなにいいのか」
「はい、好みど真ん中です!!」

 満面の笑みで答えやがった!



目にも入らない



「…雷蔵」
「あ、三郎。
 また幼なじみのくのたまの子に会いに行ってたのかい?」
「ああ…雷蔵、後生だ。
 何も言わず君の顔を無期限で貸してくれ!!」
「ええっ!?
 ちょっと、いきなり土下座して何言ってるんだよ!
 何、何があったの!?」

 何って好きな奴が君の顔を好きだと言ったんだ。
 矜持? そんなもの知るか!
 そんなものであいつの心が掴めるなら苦労しねえよ!
 が好きだって言うなら、私は一生この顔でいてやる!!


目にも入らない



 どうやら三郎の顔は、やはり不破雷蔵のものだったみたいです。
 当分は彼の顔でいるらしいですよ。
 こういうのを眼福って言うんですかね?あれ、違います?
 それにしても、三郎の変装術は相変わらず見事です。すごいですよ。
 私の自慢の幼なじみです。





'11.6.16〜'11.7.1 拍手公開。

なりふり構ってられない三郎。すでに余裕がない。